たのしむをつづる

人とくらし、はたらく岩手の「馬コ」

唐突ですが、奈良を代表する動物といえばなにが思い浮かぶでしょうか?
これは「鹿」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。

それでは、岩手でもっとも親しまれている動物といえば———
意外に思われる方もいるかもしれませんが、「馬」がもっともふさわしい答えだといえるでしょう。

例えば、岩手の初夏の風物詩であるお祭「チャグチャグ馬コ」。100頭近い「馬コ」が色鮮やかな衣装を身にまとって練り歩く、馬が主役のお祭りです。
「馬コ」という可愛らしい名前で呼ばれている岩手の馬は、お祭りのようなハレの日はもちろん、人々の日々のくらしにも寄り添った存在でした。

馬がどれほど岩手の人々に愛されてきたのか。それを物語るものとして、「南部曲り屋」があります。

南部曲り屋は、人が住む「母屋」と馬が住む「馬屋」が直角にひとつなぎになった民家の建築様式で、かつて岩手の旧南部藩領(だいたい岩手県の北半分)を中心に分布していたのでこのような名前で呼ばれています。
「曲り屋」は江戸時代の中頃から裕福な農家を中心にみられるようになり、その後昭和の時代に入るまでこの様式の民家が広がりをみせていきます。

それではどうして「曲り屋」は他の地域には見られない変わった形をしているのでしょうか。

一般に農家が馬を飼うというのは、農耕の働き手として期待しているからです。それは「曲り屋」においても同じでした。
しかし、岩手の人たちは、馬を労働力としてだけでなく、もっと近い、家族同然の存在と考えていました。だからこそ母屋と馬屋を直角につなげて、大切な「馬コ」をいつも目をかけてあげられる場所に置いていたのです。まさに「ひとつ屋根の下」で人と馬が住んでいたというわけです。

そして馬の生活に欠かせないもののひとつに鉄器がありました。
「曲り屋」の土間には土で固められた竈(かまど)に鉄製の大きな釜が据えられています。これは「ザル釜」や「馬釜」と呼ばれ、この釜の中に大根の皮やサツマイモの蔓などを入れて、柔らかくなるまで煮てあげます。それが馬のエサになります。
また、岩手の冬は氷点下をゆうに下回ります。馬に水を飲んでもらうのにも、この釜で温かくしてあげました。

「曲り屋」に代表されるように農家で働いていた岩手の「馬コ」ですが、実は南部鉄器づくりの現場でも職人たちのよきパートナーとして活躍してくれました。

自動車がそこまで普及していない昭和の半ばごろまでは、鉄や木炭などの原材料を近郊の山から運ぶのにも、できあがった鉄器を鉄道駅まで運ぶのにも荷馬車が使われました。まさに「馬コ」は南部鉄器づくりの縁の下の力持ちでした。

及源工場の100年前の様子を伝える写真からも、「馬コ」が真ん中で誇らしげに働いている様子を知ることができます。

昔から南部鉄瓶の図柄に馬が登場することが多いのも、馬が岩手の人たちにもっとも愛され、頼りにされた動物であるということの証明でしょう。

現在では農耕馬も荷馬車も日本ではほぼその役目を終えてしまい、馬が身近な存在であると感じることは少なくなってしまいました。
しかし、岩手では「チャグチャグ馬コ」のようなお祭りや信仰、そしてここ独自の伝統的な民家のあり方を通じて、確かにそこに岩手の人と共に時間を過ごした「馬コ」たちの足跡をみることができるのです。

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