料理人に聞く

[後編]Sola Factory co.吉武広樹さん:レストランを飛び出し、届ける食体験

グローバルに活躍する中堅トップシェフの一人として、肩ひじ張らず自然体で実践するサステナブルな取組みのお話を聞いた[前半]。[後半]では、新生「Sola」のオープンな厨房で、ひと際目を引く(らしい※)、特注OIGEN製薪台(!)についてお伺いしました。(※コロナ渦の中インタビューはリモートで行われました。残念ながら2020年8月現在、まだOIGENスタッフは訪問できていません。)

初代フレンチ料理の“鉄人”坂井宏行シェフの下、フランス料理の基礎を学び、26歳で海外に飛び出した吉武シェフ。40か国を旅し、そして辿り着いたフランスで、たったの1年3か月でミシュラン一つ星を取得する「Restaurant Sola Paris」をオープン。若干31歳でした。

故郷である九州で、新たな挑戦をはじめた吉武シェフインタビュー[後半]です。

―そもそも「薪台」を導入しようと思った時に、OIGENに声をかけてくれたのはなぜですか?

OIGENさん以外に作ってくれそうなところが思い浮かばなかったから(笑)。引き受けてくれるところがまずない。ちゃんと納得がいくイイものを作るまでのやり取りは、時間がかかるから(メーカー側に)敬遠される。

時間と労力がかかる=値段が高くなるということでもある。例えばろくろで作る陶器は1点から作れるかもしれないが、型で作るタイプは型代だけで20~30万円かかってしまうもの。それでも、シェフはナイフ、フォーク、器、そして店内にあるものをオリジナルで作りたいと思うし、出来る限りそうしていると思います。

―【OIGEN社長】今だから言える話ですが、吉武シェフのリクエストは鉄工所の仕事。OIGENは鋳物屋です。なのに、鋳物部分がほとんどないのです。鋳物屋では通常はお断りする仕事だなというのが正直な反応でした。

でも、OIGENは数十年前までは街路灯やモニュメントもやっていたので、溶接の技術を持つ職工がいる。だからできるなと思いました。愉しませてもらいました。

sola 吉武シェフ

2018年7月。1日1便しか飛ばない福岡空港から花巻空港への便に乗り、吉武シェフが及源鋳造工場見学へ。

sola 吉武シェフ
sola 吉武シェフ
2018年8月。試作品制作開始。(下写真)何やら座り込んで覗き込んでいるのは試作品。実際に薪を入れて実験中。

sola 吉武シェフ
2020年8月。フレンチレストラン「ロレオール田野畑」(岩手県田野畑村)の伊藤勝康シェフに試用してもらう。総重量100キロ。安全性と使いやすさ。それらをしっかりチェックしてもらいました。やっと最終図案に落とし込み、正式な制作がスタートしました。

sola 吉武シェフ
2018年9月。オープンに向けて着々と準備がすすむ店内の様子が届く。奥さまの実家は伊万里の窯元。登り窯を取り壊した際に出たレンガを使って、薪台を乗せる土台に。

sola 吉武シェフ
2018年11月。「薪台」が「Sola Factory co.」のキッチンに到着し、レンガの土台に設置されました。

sola 吉武シェフ
2018年12月、「Sola Factory co.」が正式にオープン。

―薪台を納品した後、「味は人なり」という師匠である坂井シェフのお言葉を思いだしたと話してくれました。それはどうしてだったのでしょうか?

(OIGENにとって注文された薪台を作ることは)仕事なんですけど、その仕事を仕事にしないというか…。僕が頼んだことに、親身になって相談に乗ってくれる。そんな会社さんはそんなに簡単に見つからない。

レストランだと、決められたメニューがあります。そのメニューを、それぞれのお客様の個性や好みに応えて作り変えていくことは大変。でも、坂井シェフは個別で対応することを心掛けていた。

レシピで作る料理は想いが乗っからない。今日は暑いから分量を変えてみたり、世の中の傾向だから酸味を強くしようとか、人が人を思ってやるいろんなことが味に現れてしまう。

それが「味は人なり」の意味。(OIGENの)会社に行った時に、同じような考え方を持っている印象を受けました。

―【OIGEN社長】OIGENのスタッフは、正直なところ吉武さんがどれだけ有名な方なのかを知らないのです。それでも、最初に送っていただいたイメージ画像を、工場のみんなに見たせた時、内心ワクワクしているのがひしひしと伝わってくるようでした。

1年間、ほぼ毎日あれだけ火を焚いてもへたらないのはすごいこと。
sola 吉武シェフ

網の高さを調整して火力の強弱を調整。いくつか網を置けば、食材ごとに火加減を調整が可能。一般的なフレンチ料理のレストランでは多用されるオーブンやサラマンドラは必要最小限しか使わない。

―他の熱源にはない、直火だからこそ要求されるテクニックや技術力はあるのでしょうか?

素材が良ければ、シンプルで割と簡単。食材の個性が一気に出る。野菜、魚、肉。ある程度仕込むものと仕込まないものとある。ゼロから熱を入れることもあるが、一回下処理をして薪で仕上げることが多いかな。

(鋳鉄製の鍋やフライパンは)毎日向き合わないと(特性を掴むのが)難しいところがあるかもしれません。しっかり焼きたい時、ノンスティックコーティングのフライパンだと食材を載せたらすぐ温度が下がるので、熱くしっかり焼きたい時に、OIGENは重宝します。

(価格が)安いフライパンはすぐに変形してしまいます。逆に変形するのが使いやすい場面もあります。曲がっているものを焼くときは、フラット過ぎるよりも使いやすいこともある。鴨の皮目を焼くときは曲がっていると好都合な時も。

sola 吉武シェフ
オープンから3カ月後の2019年3月「薪台、ようやく慣れてきました!日々愉しく仕事ができています。」とメッセージが届く。そして5月「薪台絶好調です!」とのこと。

料理の表現はお皿の中だけではない。空間演出、そこにいる時間の流れ、いろいろなことが“おいしい”経験に作用する。ふと目にした料理雑誌のインタビューで、そんな主旨のことを、吉武シェフが答えているのを読んだことがあります。

今度は、実直かつ自由な発想で、レストランの空間を超えて届ける“おいしさ”への挑戦なのだと感じた貴重なインタビューの時間でした。実績と経験を積んだ吉武シェフの、新しい挑戦から目が離せません。

sola 吉武シェフ
新型コロナが起きる前から、お取り寄せ商品開発のために、大きめの冷蔵庫を購入していたとか。2020年4月~5月の1回目の緊急事態宣言の際に、テイクアウトのセットのデリバリーを開始。大好評。

Sola Factory co.の詳細はこちら≫より

sola 吉武シェフ


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