OIGENと暮らす

ルーツへ還る。丁寧に生きる。

音楽の世界に足を踏み入れたのは18歳の冬の始め頃。負けず嫌いな私は、散々強がって走り続けてきた。

ずっと自分らしさが解らずに、抜け出せない迷路をさ迷っていた時間は長かった。休む暇などないほうがいい。眠ることも、食べることも二の次にして、鎧を纏うように派手なメイクと奇抜な衣装に身を包み、ステージの上で闘い続けた日々。それは壮絶な毎日だったけれど、私は確実に運に味方されていた。

あの頃があるから、今の私が在るんだもの。数々の恵まれた出逢いの中で、扉を開く鍵となる沢山の言葉をもらった。
出逢う人が鏡となって、私に私自身の本当の姿を教えてくれた。そして今、私は最高の仲間たちと共に、実にクリエイティブな日々を生きているのだ。

音楽を突き詰めていくと、ルーツミュージックへと還ってゆく。

知識や技術ではなく、感性の赴くまま、血に従って奏でる音。音楽が何故存在するのか、何故人は歌うのか。そういう根本と、ずっと向き合っていたい。それは、自己肯定と似ている。理屈ではなく、自分が生まれ育った環境や家族からの影響は、忘れてはいけない自分自身のルーツ。

アメリカで出会った1人の男性が言ってくれたんだ。「あなたの声は、神様からのギフト。あなたが日本人であるということは、神様からの恵み。全てに誇りを持ちなさい。」と。

私は自分のルーツを愛する。だからこそ、自分自身を愛する。そこに生まれる音楽こそ、ポジティブで揺るぎ無い音楽だと信じている。

そういえば、同じ誕生日の兄貴がこんなことを言っていた。「俺はね、音楽の神様に愛されてるって自信がある。だって、音楽の神様に愛されるように日々を生きているんだから。」これぞ私が信頼する音楽家だ。私の絶対的ルールは、音楽に対して真摯であること。
確かに彼は、いつもじっくり、丁寧に生きている。素直に、丁寧に奏でている。私も、そうでありたい。丁寧に生きよう。素直に生きよう。自分の音楽のために。

徹夜三昧だった日々を改め、眠る時間を大切にするようになった。

クリエイティブでいるには、頭がいつでもクリアでないといけないから。身に纏う衣は、共感できる作者のものであったり、気持ちの良いオーガニックな素材の物を選ぶ。流行は十二分に追いかけてきたし、派手なメイクや奇抜な衣装はもう私の表現に必要ないから。

食べることを大切にするようになった。音楽の神様に愛されるように、奏でる私はいつもベストコンディションでいなければ。身体に優しい食べ物が必要。キッチンに立つのが好きになった。

すると、どうしても鉄器を使いたくなった。鉄瓶で沸かした柔らかなお湯は格別。身体を芯から潤してくれる。鉄のフライパンは料理屋である実家の厨房でもずっと活躍する、頼もしくて懐かしい重み。

旨味を全身に吸い込んだ鉄器の調理道具は、料理するほどに唯一無二の存在に育っていく。

自分が生まれ育った土地で昔から使われていた鉄器。

音楽がルーツミュージックに還るように、生活の中にもルーツを感じていたい。

ゆっくり、じっくり料理を作る時間は、きっと私を整えてくれる。

実は、音楽家仲間には料理好きが多く、鉄器愛用者も多いのだ。音楽を生み出す身体を創る日々の食事。私たち音楽家は、鉄器と相思相愛の関係にあるのかもしれない。

そうそう、もうすぐ引っ越しをする私。新しい家のキッチンでは鉄器のご飯釜を使ってご飯を炊こうと決めている。鉄器の並ぶキッチンを、きっと音楽の神様も気に入ってくれるだろう。
音楽生活の節目を迎えようとしている今、表現したい音楽世界がついに花開こうとしているのを感じる。大切な大切な今。全てが繋がって今があるから、今の自分に誇りを持って、丁寧に丁寧に進んでいこう。鉄と共に生きてきた先人達と、その文化を守り育ててくれている人々へ感謝を込めて。

鉄器の凛とした黒色が、私の背中を押してくれている。

文 ERYCA

ミュージシャン・岩手県出身

村上”ポンタ”秀一氏、ピアニスト柴田敏孝氏、チェロ奏者伊藤ハルトシ氏、ハーモニカ奏者八木のぶお氏、ドラマー宮川剛氏など多彩なミュージシャンとライブ活動を行っている。ラジオのパーソナリティ、コラムニスト、モデルとしても活躍中。ボランティア活動にも精力的。地元にこだわり、ルーツにこだわり、最近ではアイヌ音楽のユニットにも参加し、新たな形のルーツミュージックを開拓している。


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