及源鋳造のものづくり

「鉄のたまご焼きkokotama」はこうして生まれた 

OIGENには40年ほど前から愛されている四角い玉子焼き「角玉子焼」があります。この「角玉子焼」はガス火のみ対応の商品のため、IHが普及した現代では「使いたいのに使えない」と言うお客様からの声が多く届いていました。そんなお客様のご要望に応えつつ、既存の「角玉子焼」を超えるNew玉子焼きの開発プロジェクトが始動しました。それのデザイン担当に抜擢されたのは、当時入社1年目の細谷岳でした。彼は大学でプロダクトデザインを学び、OIGENでは製造部の一員として働き始めたばかり。彼と共に新商品開発に取り組んだチームの開発秘話を細谷本人に聞きました。

まずはじめにしたのは、玉子焼きと向き合うこと

細谷がまず取り組んだのは、既存の「角玉子焼」を毎日使って料理をすることでした。

― 細谷

「商品の良い点と改善できそうな点を見つけるために、今思えばすごい数の玉子を焼きましたね。他には他社の類似製品の情報や、インターネットの口コミなども調べました。その中で“見た目がきれいな玉子焼きを作りたい”という意見が多いことに気が付きました。そこで僕がデザインする玉子焼きは『玉子がきれいに焼けて、焼くたびに自信が付き、料理がもっと愉しくなるフライパンにしよう』と決めデザインを始めました。」

動き出した商品開発-プロジェクトチーム結成

細谷は日々もくもくとたまご焼きを焼いては考えてを繰り返しながら、自分なりのデザイン素案を2つまとめ、社長へのプレゼンテーションに臨みました。「蓋があった方がいいのではないか」「玉子焼きに特化した商品でいいのか」など様々な点が議論される中、「長く使ってもらうために飽きのこないシンプルなデザインにしよう」ということで“New玉子焼き”は、シンプルさを軸にしたデザインにしていくことに決まりました。デザインの方向性が決まったことで、“New玉子焼き”は正式に商品開発チームを組み、製造されていくことに。商品開発チームは、料理が大好きなショップスタッフやウェブ担当者、販売部長からなるコアチームを基礎に、工場の職人や外部のアドバイザーなどが加わった組織内外横断型の体制となりました。一気に商品開発プロジェクトが動きはじめたのです。

ものづくりの現場は発見の宝庫 

デザインの素案として描かれるスケッチを、製造用の設計図に起こすには、工場で実際にものづくりを行う職人たちとの話し合いが欠かせません。 溶かした鉄を流し込む砂の型をつくる造型機の制限を理解したうえでサイズを模索したり、どうしたら溶かした鉄がスムーズに型に流れ込み、OIGENが誇る美しい鋳肌ができるかなど、紙の上でのスケッチやパソコン上のシミュレーションでは分からない細かいポイントを、実際に工場で確認していきます。

― 細谷

「鉄は硬いイメージがありますが、溶けてドロドロになった鉄の柔らかい様子とのギャップが面白いと感じています。その流動的で柔らかな雰囲気を意識して、フライパン部分から取っ手までの一体感が感じられるようにしました。また、フライパンの底の幅をIHの熱源範囲ぴったりに収まるようにサイズを調整し、熱ムラが少なくなり料理がしやすいように工夫しました。」

― 細谷

「最初の試作品ができた時に、工場の職人から“お客様が取っ手を握ると少し痛いんじゃないか?”という声があがりました。実際に触り心地を確認して、設計時のイメージと実際の感触に違いがあることに気が付きました。長く愉しく使ってもらうために、取っ手の長さや握り心地は特にこだわろうと改めて強く思いました。特にフライパン部分と取っ手との重心のバランスを考え、取っ手を少し長めにすることで、握った時の重さの感じ方を軽減する工夫をしました。」

取っ手の握り心地について工場の職人と話すことで、こだわったモノづくりを工場を巻き込んですることができる。細谷は自分がイメージした触り心地にするにはどうすればよいか考え、取っ手の試作品を何本も作り、握って感覚を確かめました。工場の職人、チームメンバーや他のスタッフからも意見をもらいながら修正を繰り返し行いました。そして、“New玉子焼き”は完成したのです。

心がゆるむ 恋しい味、今日ここから―kokotama

工場や開発チームメンバーとの試行錯誤を繰り返しながら、New玉子焼きは完成となりました!しかし、名前はどうしようか。開発チームが立ち止まった時、細谷がぼそっと言いました。

「ディテールにはこだわりましたが、出来上がったデザインはある意味ふつうの形なんですよね。長く使ってもらいたいからこそ日常においてそこにあるのが“ふつう”になっていくといいなあと思うんです。」

玉子焼きという家庭の定番メニューをつくるための毎日の相棒。これからの日々に、あたりまえに“ここ”にあって、わたしの玉子焼きには欠かせない道具になっていく。ふつうに“ここ”にあって、ふつうに“ここ”から誰かの恋しい味をつくっていくのだと、そこにいた開発メンバーの気持ちがふっとゆるんだ瞬間でした。“New玉子焼き”は「kokotama」と命名されました。

“愉しさ”をこれからもデザインしていきたい

― 細谷

「デザインスケッチの段階で自分がイメージしたものと、実物の雰囲気や取っ手の触り心地などが思ったように反映できなかったところに苦労しましたが、何度も試行錯誤を重ねることで少しずつ理想の形に近づけていく工程に、ものづくりの愉しさや醍醐味があることも実感しました。」

「実際に商品が出来上がるまでは不安でしたが、完成品でチームメンバーや社員、社外の知人にも料理をしてもらい、握りやすさや、玉子がきれいにつくれるという声を聞くことができて少し安心しました。個人的には玉子焼きに厚みが出るように深めにデザインしたことで、多少玉子をひっくり返すのに失敗しても、端に押し当てて形を整えやすくした点が気に入っています。」

「『鉄のたまご焼きkokotama』はずっと使い続けてほしいとデザインしました。これから先もっと技術の進歩があるだろうとも思いますし、便利は追及していくべきと思いますが、そんな中でも50年後、100年後でも『やっぱりこのフライパンで料理がしたい。次にこのフライパンを使うのが愉しみだ!』と思ってもらえる商品になったら嬉しいですし、今後も同じ想いで、ものづくりに携わっていきたいと思います。」


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