2003年試作の上等鍋ができ上ったころに、岩手県のアドバイザー冬木れいさんが県の担当者と一緒に我が社にいらっしゃいました。のちのOIGENの未来にかかわるまさに運命的な出会いでした。
とても品があって親しみ溢れる笑顔の冬木さんに、私はこの「新技法の鍋」を使ってみてほしいとお渡ししたのです。
※弊社専務の及川秀春に続く上等開発の歴史第2段、料理研究家冬木れいさんからのお話です。
笑顔のヘビーデューティ及源クッキング
冬木 れい
私のキッチンには黒光りした南部鉄器のお鍋たちがずらりと並んでいます。
気がつけば、私は南部鉄器のヘビーユーザーです。いずれも及源鋳造の品々ばかり。
まずは、直径27cmフライパンが2つ、平たい鉄皿が一枚、ダッチオーブンがひとつ。タミさんのパン焼器も一台。最近、ココット鍋も増えました。もちろん霰模様の鉄瓶も鎮座しています。
及源南部鉄器の魅力の虜となって、かれこれ15年以上になります。
そのずっしりとした重量感のある姿にひかれ、ぜひ使いこなしてみたい!と挑む気持ちでアプローチしました。ところが、実際にOIGEN鍋を手にした私は、瞬く間に、やる気満々、多少の困難にもくじけませんよといった意気込んだ気持ちが、すっかり拍子抜けしてしまったかのように、きれいに砕け散ってしまったのを今でもはっきり覚えています。
その理由は、OIGEN鍋の使い方があまりにも簡単!だったからです。OIGEN鍋に素材をのせるだけで、美味しくなってしまう。OIGEN鍋が飛び切りのお料理に仕上げてくれるのです。お鍋まかせでこんなに美味しくなっちゃって、お料理をしたことになるのかしら?あっけにとられながらもこの上なく幸せな気分になりました。
2003年ちょうどOIGENさんが新しいタイプの南部鉄器ソテイパン=上等フライパンNakedPanを開発したばかりのころです。鉄瓶のさび止めに使われていた熱処理方法を鍋にも応用した画期的なソテイパンが実現して、これが次々とミラクルを呼んでくることになりました。南部鉄器の最大の悩みの種だった鉄鍋は錆びる!という大問題を、高温処理で酸化皮膜をつくることによって解決し、錆びにくくなったソテイパンは、無塗装のエコ鍋として仕上がります。そして、無塗装であるという条件が、鍋肌の表面温度を理想的に高めることができるという効果をさらに生み出しました。これは、カリッとした食感に仕上げるクリスプソテイにもってこい!最適条件です。
なんといっても、目玉焼き。黄身の火入れ具合も自在だけれど、真価をはっきするのは白身部分のカリカリ度。余熱に任せて鍋にのせておけば、白身の周りはレースのような仕上がりとなるのです。
「笑っちゃうほど美味しい目玉焼きが、笑っちゃうほど簡単にできちゃうね!」といつしかみんながいいはじめ、共通認識をもつようになって、上等鍋、NakedPanのさらなる向上を目指した会議がもたれるようになりました。
その名も、「笑える玉子委員会」。この幸せな笑顔をつくりだすミラクル鍋にむけてのアイデアは、尽きることなくあふれてきました。私も、「笑える玉子委員会」に何度も参加して、ミラクル鍋の魅力について熱く語ってきました。人を自然に熱くさせてしまうほどの鍋の実力に、毎回おどろかされっぱなしです。
斯くして、私は15年来、及源上等鍋NakddPanで、卵を焼き、肉を焼き、ソースを作り、付け合わせの野菜を焼きあげる及源ヘビーデュデイクッキングの日々を送っています。そして、もちろん、キッチンに笑い声がたえることはないのです。
冬木れいプロフィール
栃木県の真言宗の寺に生まれ、幼少時より行事料理、郷土料理に興味をもつ。
料理研究サロン『大きな竈』を主宰し、本草学を取り入れた江戸料理からスパイス料理まで、幅広く紹介。古典レシピを現代の食卓に活かす料理法を研究テーマとしている。
薬膳会の開催、NHKドラマ「幕末グルメブシメシ」料理監修等、活躍中。