「鉄はさびやすい金属でしょう?だから鉄器を使うのは厄介だなぁ。」と思われる方々も多いと思います。「厄介」の原因のほとんどは赤サビです。
さて、サビには【赤サビ】の他に【黒サビ】があります。赤サビはさびつくと進行してボロボロと鉄器の表面が傷んでしまう、まさに厄介なサビです。しかし黒サビは鉄器の表面を赤サビからプロテクトする優れものなのです。
鉄器の2つのサビについてお伝えします。
鉄器は、鋳造(液体となった鉄を型に流し込み、形を作る技法)されて、型から取り出した時には、鈍い光沢のある”ねずみ色”です。
この鈍い光沢のある”ねずみ色”のままの鉄器を水につけて取り出し、空気中におく(酸素に触れる)と【赤サビ】が発生します。下の写真は水を一日入れたままにしておいたもので、浮き出た赤サビが水に溶け出しています。
そして、鉄器には赤サビが生じます。
黒サビ(酸化皮膜)
しかし南部鉄瓶は、このように常に“さびる湯沸かし道具”ではありません。なぜでしょうか?そこには理由があります。
もう一つのサビ【黒サビ】の存在があるからです。鉄は、900℃程の高温で加熱をすると、その表面に酸化皮膜をまとうという化学変化が起こります。この酸化皮膜を【黒サビ】と呼びます。
黒サビは、青っぽい”ねずみ色”です。この黒サビが、鉄表面の赤サビの発生を防ぐために効果を発揮します。
鉄瓶の黒サビ
OIGENの鉄瓶は全て900℃程に加熱され、全身に黒サビ(酸化皮膜)を形成させています。最終的に南部鉄瓶は、外側を黒等に着色してショップに並びます。
表面は黒い色ですが、ほとんどのOIGEN鉄瓶の内部は、青っぽい”ねずみ色”の黒サビ(※)のままになっています。
※OIGEN公式オンラインショップでは、鉄瓶の商品ページに【内部素焼き】と表示しています。
黒サビの防錆
黒サビをまとった鉄瓶と鈍い光沢のある”ねずみ色”の生地のままの鉄瓶で赤サビの発生の実験をしてみました。下の写真は20日間、水道水を入れたままの状態です。
左の鉄瓶の内部には小さなサビが見えていますが、水はきれいな透明です。右の鉄瓶は赤サビが溶け出して赤水となっています。黒サビ(酸化皮膜)をまとった鉄瓶は、赤くさびにくいことがお分かりいただけると思います。
しかし、鉄器は鉄ですので水を入れたまま放置せず、使い切った後は空焚き(30秒程度)をしてしっかり内部を乾燥させてください。もし、赤サビが発生してしまった場合には、下記の記事をご覧ください。
お手入れ不要!な鉄瓶の赤サビ
お手入れ不要!な鉄瓶の赤サビ
鉄瓶にできる赤サビには、実はお手入れが「必要な赤サビ」と「不要な赤サビ」があります。実際にOIGENスタッフが使用中の鉄瓶を参考にお手入れ「不要な赤サビ」についてご説明します!
鉄瓶のお手入れ:さびてしまった時
鉄瓶のお手入れ:さびてしまった時
万が一、鉄瓶に赤サビが出た場合も正しいお手入れをしてサビを落ち着かせることで、そのまま末永くお愉しみいただけます!お手入れが必要な赤サビが出た時のお手入れ方法をご紹介。
黒サビの鉄鍋・鉄フライパン
OIGENでは、鉄瓶以外にも900℃程で焼いて黒サビ(酸化皮膜)を形成した「鉄鍋・鉄フライパン」がございます。一般の鉄鍋・鉄フライパンとは異なる長所を持った商品群ですので、下記より各商品ページをご覧ください。
黒サビ(酸化皮膜)を形成した無塗装の鉄鍋・鉄フライパン一覧⇓
元素記号”Fe” 鉄
鉄の元素記号は”Fe”
鉄は地球上で最も多量に存在する元素で、地球の核のほとんどは、熔けた鉄からなると考えられています。鉄は地球重量の約3分の1を占めていて、この点から見ると地球は「鉄の惑星」とも言えます。
私たちの血液にも”Fe”が存在しますので、生物にとって最も身近な金属と言えます。
時々、「鉄器に使っている金属は鉄だけですか?」と質問を受けることがございます。
主となる金属は”Fe”(鉄)ですが、元素としては他に5つ含まれます。なぜなら、純粋な”Fe”はそのままで存在することは難しく、鉄と他の元素の化合物として一般的に存在します。
鋳鉄の中には、鉄以外の元素として主に、C(炭素)、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Mn(マンガン)の5元素が含まれていますが、微量元素としてさらに多くの元素が含まれています。鉄は、C(炭素)の含有率で鉄の性質が変わりますので、硬い鉄、柔らかい鉄などの様に工芸品に向く鉄や機械部品に向く鉄などバリェーションが生まれるのです。