料理人に聞く

[前編]料理研究家 今里佳子さん:ありのままの“普段着”料理で旅をする

今回取材をしたのは、埼玉県秩父市の古民家を拠点に、ベジタブル&穀物を中心とした“植物料理”の料理教室講師や出張料理人として活躍する、“ヨシさん”こと今里佳子さん。

よしさんプ記事前編1

ヨシさんは、直営店舗ファクトリーショップでOIGENの人気商品「タミパン クラシック」(2014年発売開始)の開発アドバイスとレシピブックの※料理・監修をお願いした方。当時は東京国立にあったカフェ・トピナンブールを切り盛りしていた頃でした。常に地元の人でにぎわう繁盛店でした。OIGEN本社に来る日はみんなそわそわ。そのくるくる動く大きな瞳と明るくやわらかい笑顔にOIGENスタッフの中にも隠れファンが多いのです。
※直営店ファクトリーショップと公式オンラインショップでお買い上げの方のみ無料プレゼントしています。

スパイスやハーブがアクセントになったヨシさんのお料理は、“ベジタリアン”、“ビーガン”がベースになっていますが、ご本人は「こうでなくてはいけないという、イズムはないんです」と話します。自身の生きづらさという経験を乗り超える中で「食」と向き合ってきた料理研究家ヨシさん流の、“普段着”のまま料理するコト、暮らすコト、そして生きるコトへのヒントを教えてもらいました。

INDEX:料理研究家 今里佳子さんに聞く
1.インタビュー前編「ありのままの“普段着”料理で旅をする」
2.インタビュー後編「ありのままの“普段着”料理で旅をする」
3.お手紙「その土地のその季節の味を引き出す“植物料理”」

|多様性×調和がテーマの「なないろごはん」|

よしさんプ記事前編1

オープン間近の古民家カフェ&アトリエの名前は「なないろごはん」。

「“なないろ”ってまさに多様性じゃない。多様性と調和というわたしが大切にしているテーマを込めたの。お皿の上で(多様な食材が)調和して、自然や環境との調和があり、体に浸透していくという調和があり、そして四季折々の多様性があって。余談なんだけど、パートナーはLGBTQでいうトランスジェンダー。レインボーでしょ。多様性でしょ。

そのパートナー”まるさん”がかつて住んでいたシェアハウス「なないろハウス」の住人が、アーティストや自然療法家、研究者、旅人と個性豊かで、よくイベントをやってて、情報発信基地みたいな所だった。今はそのシェアハウスはなくなってしまったから、“なないろ”のスピリットを引き継ぐという思いもあって命名しました。」とやさしく微笑む。

ヨシさんの料理は、季節の野菜と穀物、発酵食品を使い、そこに異国のハーブやスパイスをアクセントに効かせた創作多国籍ベジ料理。ヨシさんはこれを、「植物料理」と呼んでいます。

「基本的には動物系の食材を使わないベジタリアン料理だけど、”主義=イズム”といったタブーを決める必要はないかなと思ったの。それよりも、ベジっておいしいっていうのをもっと発見できたら、みんなが五感で愉しんでくれたらいいなって。野菜も穀物もスパイスも植物。だから“植物料理”っていう言い方がしっくりきているって感じなのかな。自然の恵みである植物を料理してる、植物を食べてるっていう感覚を大切にしたい。うん。」

一つ一つ、言葉をていねいに確認するように話すヨシさん。新型コロナウィルスが脅威を振るう中で、オンラインでの画面越しのインタビューでも、その実直さが伝わってきます。

| マクロビオティックという“正しい”教え |

植物料理研究家のヨシさんの基本になっているのが、20代半ばに出会ったマクロビオティックという食事法です。その頃、原因不明の慢性湿疹に悩まされ、食べ物を見直そうと学び始めました。

「自然のバランスの中で体にも地球にもいい食事をしていこうというものだから。そこで教えてもらったことが、一番のベースになっているのは確かで。四季折々のもの、四季に沿ったものをいただくっていう。身土不二(しんどふじ)…体と土の健康は切り離せないとか、一物全体…食材を丸ごと食べいようだとか、陰陽のバランス、体を冷やすもの、温めるもののバランスだったり。日本の伝統的な食の知恵がつまったものがマクロビオティックの教えなんですよ。」

よしさんプ記事前編3

「食事をシンプルに、ピュアなものにして、体と向き合っていったら(湿疹が)治ったの。時間は少しかかったけど、じくじく系のアトピーのような湿疹が全身に出て、袖なしは着れないくらいだったのに。手と足がひどくていつも包帯巻いてたの。だから治ったのは、自分にとってミラクルな体験で。これが正しいんだって思って。凝り性だったから、こうでなくてはいけないって思って一生懸命やったのかな。そしたら、なんと摂食障害やっちゃったの!」

さらっとしかも明るく「摂食障害」という言葉が出たので、筆者は少しドキッとしました。「原因は食べものだけではなかったと思うのよ。食に向き合う姿勢や考え方といった精神的なものが大きかったと思う。わたしお肉やジャンクフード食べたいなんてことはみじんも思ってません、ってふりして感情を押し込めてた気がする。こうでなくてはいけないって。ピュアな私でいたいからってね。体も環境もよくなるし、みんなにいいはずなのにって自分を追い込んでね。おかしいな…って。」

無意識に自分に課していたとらわれをひとつひとつ解放し、過食の衝動に襲われる自分、嘔吐する自分をそのまま認めてあげることで、徐々に症状は改善されていきました。

| 料理本と心理学の本が並ぶ本棚 |

「ヨシベジ」という名で料理研究家としての活動を行う中、2010年、東京国立にカフェトピナンブールをオープンします。一軒家の一階を改装したカフェへは靴を脱いで入ります。畳のお部屋は親子連れでいつもにぎやか。テーブル席はマダムたちのおしゃべりに花が咲きます。お庭に大きなウッドデッキがあり、天気がいい日はお外でも食べられます。その頃に冒頭で登場したまるさん(パートナー)にも出会いました。そんな繁盛店でしたがたった5年で店を畳みました。その後、自宅サロンで料理教室や他の講師を招いての手仕事教室などを運営していました。

2017年、埼玉県秩父市へ移住することになります。かねてから自給自足の暮らしを目指していたまるさんと、とある古民家を見つけ、しばらくは行ったり来たりの二拠点生活でしたが、結果的に「ところてんのように押し出された感じで、引っ越しました。サロンで設備を入れたり新しいプロジェクトをやろうとしていたのだけど、笑っちゃうくらいのタイミングでうまくいかないことが続いて。店を閉じた後、体調を崩してしんどかったところもあって、今までやってきたことを手放すときかなって。」

「昔から明るいキャラの反面、自分を追い込んでしまう生きづらさがあったの。それが体の症状にも表れてくると言うか。めまいや耳鳴り、不眠。自律神経失調症の症状をひととおり経験した。いろいろ調べていくと、症状よりももっと深いところ、(複雑な家庭環境だった)幼少の頃にさかのぼる潜在意識のプログラミングに要因があることを知った。私だけじゃない。生きづらさを感じている人っていっぱいいるなって。そして実はそこから学べることはたくさんあって、生きづらさって決してマイナスなことじゃないの」

「私の本棚は料理本と心理学の本が半々くらい」と明るく笑います。

| いい意味で雑多なインド、多様性そのもの。 |

よしさんプ記事前編4

自分自身と対話をする、対峙する中でインドに足が向いたのでしょうか。ヨシさんのお料理と言えばの、スパイスやハーブとの出会いのお話です。悩みながらも「食べるコト」「生きるコト」に向き合ってきた20代、30代。いつもどこかでつながっていたのがインドでした。

「インドは私のもう一つのルーツ。生きるとか暮らすとか、人とのつながりとかがすごくダイレクト。一つ一つがはっきりしている。何十年か前から、20代の前半ではじめて行ってから時々行くようにしてきて、ここ数年は毎年。行くと新しい料理法も学び。スピリチャルなエネルギーももらい。風土的な元気ももらって帰ってくる。そんなところなんです。最初行った後は10年後みたいな感じでしたが、心はなぜかつながっているみたいなね。」

2008年以降は、1945年創業のオーガニックスパイスの貿易商社の商品開発サポートをしています。本社があるコルカタはイギリス統治時代、東インド株式会社が貿易の拠点にした港町。今もスパイスや茶、ジュートなど、貿易が盛んなインド経済の中心地です。伝統と信頼を重んじる4代目の社長とは、家族ぐるみのお付き合い。子供たちにもお菓子作りを教えたりしています。

よしさんプ記事前編5

ここ数年、通う場所があります。インド北東部、ヒマラヤ山脈の麓にあるシッキム州。ネパールとブータンに挟まれ、近年まで王国だったという歴史がある特別な地域。なんと、ここは州全体を有機農業に切り替えるインド初の試みが行われている場所でもあります。

「私たちと同じ顔(モンゴロイド)の人が多くて、どこか親しみ深いの。山が深いのでもともと自給自足的な有機農業が基本だったのだけど、さらに州政府の指導のもと、合成農薬や化学肥料を州内に持ち込まない、ということをやっている。私たちがぱっと思い描くインドとはだいぶ違う、なんだかひと昔の日本のような懐かしい風景があるの。」

そこでは貿易商社と取引のあるジンジャーとターメリックの農家に滞在しています。「ファームステイしながら、家庭料理を学び、ミルクからスパイスまでほぼすべて自給する暮らしを体験させてもらっているの。まるごと感じ取ったものを、日本に持ち帰って伝えたいと思って。」多様性そのもののインドという地が、ヨシさんのパワースポット。

聞き手・文:薗部七緒(そのべななお)

料理研究家 今里佳子さんインタビュー後編

インタビュー後編
料理研究家 今里佳子さんインタビューの後編。
ヨシさん流“普段着”のまま料理するコト、暮らすコト、そして生きるコトへのヒント!

インタビュー後編


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