
機能性やデザインだけでは品質を語ることはできません。
厳しい風土と人の手によって培われた鉄器が、暮らしの中で使いこまれ、かけがえのない長い友となっていく。そのすべての時を含めて、及源鋳造が日本の伝統工芸の老舗として、約束すべき品質であると考えます。

自分たちが使う道具をただ作ってきた
ここ岩手県奥州地域は、半農半工の村人たちによって鋳物業が脈々と続いてきた地です。ここには、自分たちの暮らしに必要なものを、自分たちで作ってきた歴史があります。
3代源十郎の時代は、大きくて複雑なカタチの竈(かまど)さえも、自分たちで作っていました。その鋳物の技術は、現代では作れる職人がいないほどです。
ごはんを炊く釜もお汁を作る鍋も、自分たちで作り、自分たちで使う。厳しい東北岩手の冬、いろりにはいつも「雑釜」と呼ばれる鋳鉄の釜がかけてありました。
丈夫で長く使えるたくましい道具。華美な装飾はないけれど、素朴で使う手になじむ道具。そんな、暮らしに寄り添う道具を、及源鋳造は作り続けてきました。

proof of traditional quality
美しい鋳肌は伝統品質の証
美しい鋳肌は伝統品質の証
鉄鋳物は、鮮やかなだいだい色に溶けた鉄を、砂で作った型に流し込み、温度が下がり固まったら、砂型を崩してできあがるもの。
型の砂の粒子が、固まった鉄の表面にそのまま映し出されること。
それを私たちは「鋳肌が美しい」と言います。
砂型を崩して出てきた鋳物の「出来の良さ」を、及源鋳造ではその「鋳肌の美しさ」で判断します。

鉄と砂、代々培われてきた職人の技
及源鋳造|OIGENの代名詞とも言える「美しい鋳肌」。そこには、先代の職人から学び、培ってきた職人の技があります。

一つ、砂。
職人たちは一日に何度も、型に使う砂を握り、そのしめり具合を確かめます。気温や湿度の微妙な変化で、砂の乾燥具合はすぐに変化してしまうのです。ちょうどいい塩梅は手の感触で確かめます。

二つ、鉄が走る道。
砂型の中には製品のカタチをした空洞と、そこへ溶けた鉄を流し届ける「湯道」と呼ばれる鉄が走る道があります。この「湯道」の的確な設計は、鉄と砂に向き合いその性質を熟知していないとできません。OIGENが誇る、多様なデザインの数々を実現するのに欠かせない技術です。

三つ、鉄。
重く大きな煮込み鍋と小さな茶托。それらは同じ砂で型をつくりますが、それぞれの特徴を見極めて、鉄の温度を変えて注ぎます。大きな重い鍋は、高温で素早く鉄を流し、小さな茶托は、重い鍋よりも200℃程温度を下げて注ぎます。数々の製品にそれぞれの特徴。長い経験によってそれぞれに適切な鉄の温度を見極めているのです。

革新的な技法「無塗装はだか仕上げ」――それは、生まれたまま仕上げる技法

無塗装はだか仕上げ
生まれたての赤ちゃんの肌のように繊細で、触れた手の油がすっと馴染む、きめ細かな鋳肌。及源鋳造が独自に開発したこの表面処理技法は、2006年に日本国内で製造特許を取得しました。
鉄と砂。170年以上、この素材と向き合ってきた及源鋳造が挑んだのは、塗装に頼らず、鉄と砂だけで仕上げるサステナブルな技法の確立です。伝統と革新が交差する、“裸の鉄器”という新たなプレミアム・スタンダードです。
「無塗装はだか仕上げ」の鉄鍋や鉄フライパンは、やさしいグレー色をしています。型から取り出したばかりのねずみ色の鉄器は湿気ですぐに錆びてしまうため、南部鉄器では塗装を施すのが常識でした。しかし及源鋳造は、900℃の高温で焼き上げることで鉄そのものの組成を変化させ、錆びにくくする製法に挑み、革新的技法開発に成功しました。鉄の表情をそのままに、安全でタフな一枚に仕上げています。

無塗装はだか仕上げ
南部鉄器の一般的な仕上げ塗装
すき焼き鍋や鉄瓶などの印象から、「南部鉄器=黒」というイメージを持つ方も多いかもしれません。力強さや重厚さを感じさせる黒は、実は、錆びやすい鉄を守るためのコーティングの色。かつては漆が用いられてきましたが、戦後は漆に似た性質を持つ、カシューナッツ由来の塗料が使われるようになりました。

従来仕上げ

無塗装仕上げ

及源品質は、職人たちとともに鉄器づくりの伝統を受け継ぎ、そして革新し続けることで、磨かれていきます。
これからも、自然由来の、安心して使える鉄器を――ここ岩手から、お届けします。
OIGENクオリティー商品を体験してみてください。
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及源品質をつくる及源鋳造の職人たち
職人たれ――及源鋳造で鉄器をつくり届ける者たちにかけている言葉です。製造、検品、梱包、そして直営店やオンラインなどでつかい手と向き合うすべての者が、OIGEN品質をつくる一人ひとり。どの役割も「職人」であるという覚悟と誇りをもち、鉄器をつくり、届ける日々の仕事に向き合っています。
経営
鉄は変化する。何にでもなる。だから難しい。だから挑戦する。だから考える。それが愉しい。
製造統括
鉄を熔かす時は神聖な気持ちになる。畏敬の念で溶かす。時に鉄は牙をむくけれど、できたものは優しくあってほしい。料理をつくる時は、愉しくあってほしい。
溶解
熔けた鉄は生き物と言うか子どもです。適当な扱いをすると機嫌を損ねるし、ひねくれる。手間をかけないとダメですね。手間をかけた分だけ応えてくれる。それが面白い!どっぷりはまっています。
焼型
型を作る段取りで粘土をこねているのが面白い…面白い!鉄は若干憎らしさもある。なんで言うことを聞いてくれないんだ、みたいな感じ。それでうまく行った時にはほっとする。そうやって積み重ねられてきたものが伝統だと思う。
梱包
お客様のお手元に商品が届いて箱をあける。その瞬間のたのしみまでが私の仕事。
デザイン
自分たちが作ったものが、100年先のどこかの家庭で使われているかもしれない。そんな可能性を秘めたプロダクトに関われるのは大きな魅力。100年続くものづくりのすごさと、そこに携わる愉しさを実感している。
ロジスティクス
鉄器は私の故郷にずっとあるもの。見た目はごついけれど優しい素材かな。何回でもリサイクルできて地球にやさしい。鉄瓶はすぐにポンとお湯が沸くわけではないけれど、手をかけてあげたり見てあげたりという面白さを、私は感じています。
営業販売・WEB
お客様と話していると、商品をほめて下さったり、鉄器愛を熱く語ってくださることがよくあります。営業・販売を担う者として、偽りなく愛情を持てる商品を販売できることはうれしいし、誇りだなと。入社してから、鉄器の重さは“かわいい重み”、抱えてあげたくなるような“温かい重み”に代わった。鉄器に全員「目」があるように思えてきたのです。顔があるというか。先輩が鉄器を「この子」と言う意味が今なら分かります。
営業販売・直営店
鉄器をご紹介しながらお話をしていると、お客様がパッとひらめく瞬間があります。私たちが意図していることが伝わる瞬間があります。お客様の心が動いたと感じる瞬間がとてもうれしい。喜んでもらえるのが接客業の醍醐味だと思います。
総務・経理
会社に入るまで南部鉄器という言葉は知っていたけれど鉄器は知らなかったし、使ったこともなかった。今では毎日使っています。鉄器を使っていない日は料理をしていない日。多分あらゆるものが使えば使うほど痛んでいく、終わりに近づいていく。鉄器にはそれが無いな。終わらない、数少ないものだなと。育っていくものって貴重だなと思います。